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Kyushu’s Spirit – Shochu

ール、ウイスキー、ウォッカにワイン…この世にはたくさんのお酒がある。 それぞれの国で土地の環境や気候を活かして造られるお酒だけど、”日本の酒”のイメージってやっぱり「サケ(清酒)!」が強いよねぇ。でも、何かの縁で九州に足を踏み入れたみなさんには、やっぱり九州産地の本格焼酎の魅力をぜひぜひ知ってもらいたい! 素材の旨味をいかした本格焼酎を、日本を代表する酒のひとつとして認識してほしい、そんな願いを込めて送る、焼酎特集だ!


本格焼酎っていったいナニ? 日本酒との違いは?
う~ん、分かりやすく言えば、違うのは造り方。日本酒は原料のお米をビールとかワインのように発酵・熟成させてつくる醸造酒。一方焼酎は、原料を糖化させた後発酵させ、その液をウイスキーやウォッカと同じように蒸留してつくる蒸留酒。で、その原料が芋なら芋焼酎、麦なら麦焼酎…とよばれている。さらに! その焼酎にはふたつのタイプがある。東京から北のエリアでは、焼酎に梅干しやレモンを入れて飲んだりする姿をよく見かけられるのだが、これは”甲類”とよばれる焼酎を飲んでいることが多い。この甲類焼酎は、蒸留を何回も繰り返してつくられるので、無味・無臭、居酒屋の定番「酎ハイ」に使われるのはこのタイプ。別名“ホワイトリカー”という。そしてそして、日本の南エリア、特に九州で愛されてきたのが”乙類”と呼ばれるもの。歴史も古いことから”本格焼酎”の名を持つ。単式の蒸留で、原料の風味がしっかりと現れるのが特徴なのだ。
ついでに歴史も知っておこう。中国大陸やアジアの南洋諸島ではすでに 13~14世紀頃に焼酎が造られていたらしく、それが日本に伝わったのは約500年前(安土桃山時代ね)と言われている。経路には3つの説、1)タイ方面から琉球(現在の沖縄)コース、2)中国の山岳部から上海を通じてコース  3)中国北部から朝鮮半島を通じてコース がある。いずれにしてもやはり九州地方への伝来で、焼酎と九州は深い深い関係があるのだ。特に乙類の本格焼酎、これはワインと同じように土壌が大事。豊かな水と自然に育まれ、素材や原料が豊富な環境がこの九州にあるからこそ、うまい本格焼酎が造られてきたのだ。

だがだがだが、正直なところこの本格焼酎、ちょっと昔までは「おやじが飲む酒」のイメージが強く、全国どころか九州でも万人に支持される酒ではなかった。それが、だ。平成12年に、いわゆる本格焼酎ブームがおこる。これまで「焼酎なんてさ~」とか言っていた人たちが、原料の持ち味をいかした深い味わいに「アラちょっと、おいしいじゃん」と遅くも気付きはじめた。その消費の拡大は、九州そして関東エリアまでずんずんと攻め込み、ここ数年うなぎのぼり。飲食店のドリンクメニューにもズラリと並んだその銘柄をみかけることが多くなったのである。

愛されはじめた理由。
「飲んでみたら、旨かった」これがブームの一番の理由。でもそこにはちゃんと“焼酎=魅力的”理由が存在する。例えば、
1) 季節に関係なく飲める
温かくしても、キリっと冷やしても美味しい。好きな飲み方ができるので、春も夏も秋も冬も1年中おいしく楽しめるのだ。
2)カロリーが…
よく焼酎はカロリーが低いっていうけど、正確にはちょっと違う。実は、お酒のカロリーには「原料分のカロリー」と「アルコール分のカロリー」というのがある。原料分のカロリーは体内に蓄積される(つまり太るもと)が、アルコール分のカロリーは飲むとすぐに熱となって外に放出されてしまう(だから身体が熱くなったりする)のだ。焼酎のカロリーはすべて、このアルコール分のカロリー! だから太らない、と言われるワケ。でも、つまみを食べ過ぎたら一緒なので、ご注意を…。
3)健康にいい説
倉敷大学のある教授がイギリスの医学雑誌に発表した説では「本格焼酎は、血栓症(血管の血液が凝固する病気)の予防に効果がある」らしい。この他にも、心筋梗塞や糖尿病にも効果が期待されていたり、まだまだ焼酎のヘルシー効果は潜んでいそうだ。
4) どんな料理にも合う!
と、断言したい。本格焼酎は原料ごとに味の特性が違うので、食前・食中・食後、和・洋・中、いろんなシチュエーションや料理に応じて選ぶことができる。ワインみたいに。今、日本人の食事はかなりワールドワイドで雑食だ。そこで、何にでも合う焼酎! のニーズが高くなるのは当然のコト。
と、考えるとやっぱり本格焼酎は世界中で飲まれてもおかしくない! ただのブームなんかじゃなくて、今後も焼酎は年齢層やエリアをどんどん拡げて、ますます伸びて行くだろう。そう、ここ九州から。焼酎は未知なる可能性を秘めた、ニッポン人の財産だ。



焼酎 (原料)の種類
本格焼酎の魅力のひとつは何といっても酒蔵が厳選する質の高い原料。その原料がしっかりと風味や香りに表れるのも特徴だ。さて、どれが好み?


サツマイモを原料に造られる酒は焼酎のみ。芋ならではの独特の香りと味、ソフトな甘みを堪能するにはお湯割りや、ロック、ストレートがグッド。ちなみに10~11月は芋焼酎の旬だ。
代表的産地:鹿児島県、宮崎県


日本人の主食である米を使用した焼酎はもちろん全国各地にあるが、代表格は、熊本、人吉盆地の球磨焼酎。果実を思わせるなめらかな風味を楽しむなら、ロック、ストレート、あるいはお湯割りで。
代表的産地:熊本県


麹に米を使うか、麦を使うかが味の決め手。麦特有の香ばしさと癖のないマイルドな味わいでダントツの人気を誇るのが原料から麹まで麦で一貫した大分産。ロックよし、水割りもよし。
代表的産地:大分県、長崎県(壱岐)、宮崎県

そば
焼酎原料の多様化は、そば焼酎の誕生に始まったとも言われる。そば特有の香りとほのかな甘味をもった素朴な味は若者にも人気。クラシカルなお湯割りか、ロックもいいかも。
代表的産地:宮崎県、長野県、北海道

その他
最近ではとうもろこしやゴマ、じゃがいもなどを用いた様々な焼酎がある。そして清酒を造る時に残る酒粕を使って造るのが“粕取り焼酎”。そう、清酒造りの盛んなここ福岡は粕取り焼酎のメッカなのだ。また、タイ米を使用する沖縄の泡盛や、鹿児島県の島々で造られるまろやかな甘味の黒糖焼酎も、より注目を集めはじめている。



美味しく飲むヒント
ハッキリと言おう。お湯割り、水割り、ロックにストレート、主に4種類の飲み方があるが、別にこの焼酎にコレ! といったきまりはない。”好みの焼酎+好みの飲み方”を自分で発見するコトこそが喜びなのだ。その発見のためのヒントをいくつかご紹介。

●香りを堪能できるお湯割り
ぬるめのお湯(沸騰している熱々はNG!)をグラスに注ぎ、その後に焼酎を注げば、器も温まるし、お湯と焼酎がよく混ざり合ってフワ~ッと香り立つ。あるいは、より香りを増すなら焼酎をそのまま温めてもいい。

●甘さをひきたてるロック
初めて飲む焼酎なら、本来の味をもっとも味わえるストレートで試してみては。また、ロックで飲むと不思議と甘さがひきたつ。ロックのポイントは、氷につかう水! 水道水じゃなく
ミネラルウォーターなどを使った方がいい。氷が溶けて混ざった時に味に違いが出るぞ。

●焼酎を引き立てる器
有田焼で飲もうと、バカラのグラスで飲もうと、お気に入りの器がいちばん。ただし鹿児島では「黒ぢょか」という特別な酒器があり、これに焼酎を入れて火にかけぬる燗にして飲むと絶品!

~ちょっとこだわって飲む~
1度は試してみてほしい、伝統的な飲み方
1)あれば黒じょか、なければ陶器やペットボトルなどに、焼酎と美味しい水を入れる(5:5くらいがオススメ)。
2)一晩から二晩、そのままにして置く。
3)黒じょかならそのまま、あるいは小鍋などに入れ、湯せんもしくは火にかけて温める。
4)ぬる燗になったらよく混ぜる。
まろやかでスーッと喉を通る、ひと味違う味に!



基礎の基礎! 使える焼酎用語
ろくよん
焼酎を水またはお湯で割る際の割合。「6:4」(ロクヨン)が最も浸透しているが他にも「7:3」(シチサン)、「5:5」(ゴウゴウ)などがある。前の数字が焼酎、後がお湯(水)なので間違えないように。
使用例:「飲み方どうする?」「じゃ、ろくよんのお湯割りで」

ごごうびん きーぷ
大勢で店で飲むか、その店によく来るならば、ボトルをキープした方がおトク(できない店もある)。一升瓶は飲み干す自信がなくてもその半分の五合瓶(ないのもある)でトライしてみては。
使用例:「お飲み物は?」「“いいちこ”の五合瓶キープで。水割りセット(水と氷)もね」


焼酎そのまま、「生」つまりストレートのこと。
使用例:「初めて飲むけん、生(き)で飲んでみようかいな」



Tasting the Spirits…
さて、実のところ本格焼酎は、インターナショナルになれるのか? その課題を解消すべく、今回「本格焼酎試飲会」を企画、各国からお酒好きのみなさん8名を招いて開催! 酒造メーカーさんからご協力いただき、選び抜いた4本の本格焼酎をブラインド方式で試飲。ストレート、ロック、お湯割りと各飲み方で味の変化も試してもらいました。さて、感想はいかに…!?

~ コチラの4種を試飲~

A

海童 / 濱田酒造
薩摩イモを蒸したような深い味わいとほのかな甘味が口に広がる。なんと13年度の鹿児島県本格焼酎鑑評会で第1位を獲得したというツワモノ。


B

黒伊佐錦i / 大口酒造協業組合
良質の水と米、薩摩イモなど非常に恵まれた自然環境の中で造られている。黒麹仕込みで、華やかな香りそして独特のコクとまろやかさ。


C

博多の華 三年貯蔵 / 福徳長酒類
モンドセレクションにて3年連続で賞を獲得。厳選した大麦を使い、三年間樽にねかせ熟成させることで生まれる、やわらかく軽快なキレ味。


D

繊月 / 峰の露酒造株式会社
2種類の蒸留機から造られる風味の異なる焼酎を絶妙にブレンドして生まれるのが、この繊月。球磨川の澄んだ水と選ばれた米からできる純米焼酎。



U.S.A.
Noah
C ならどの飲み方でもイケるね。でもDのお湯割りも飲みやすい。ただアメリカではビールが主流だし、焼酎の浸透は難かしいかもなぁ。

Canada
Dave
オリジナルな味のAは素晴らしいね。芋焼酎だろ、ウマイよ。Dもなめらかで透明感がある。これも芋だと思ったんだけど…。

Korea
Minami
Cがいちばん好きでした。今は韓国の若いコだちも水割りやお湯割りを飲んでるし、これなら受け入れられると思います。

Costa Rica
Mauricio
ウイスキーみたいなCもいいし、印象的な味のAもいいね。焼酎って、甘さが効いてて、それがフワッと口に広がるんだね。

Hungary
Zilia
Cがいいかな。これって麦かしら?素晴らしいリッチな味わいだわ。BとDの風味がすごく似てた(原料違うんでしょ)のにビックリ。

Thailand
Chokang
AとDが香りも味も気に入りました。焼酎はタイのアルコールに似てるけど、タイと同じようにストレートで飲むのがいちばんかな。

Russia
Lenik
どれもすっごく美味しかった。Cが一番なじみがあって、Dのは酒を彷佛とさせた。お湯割りならBがバッチリだったよ。

Italy
Alessandro
ウイスキーの風味のC、そしてすぐ酔っぱらえそうなBも好き! イタリアではサケはポピュラーだし、焼酎も時間をかければどうにかなる! トクにお湯割りでね。



さて総評は…?


お気に入りは三者三様、しいていえば慣れ親しんだウイスキーの風味と似ている麦焼酎は、比較的すんなり喉を通った模様。また、お湯割りは初挑戦という人がほとんどだったが、「香りが出る」「なめらかになる」とまずまずの評価。あまりお湯割りでは飲まない米焼酎も「クセがなくて飲みやすい」という票を集めたのが意外なところ。そして多くの人が、「(時間がかかるにしても)自分の国でも浸透すると思う」と答えてくれた。トータルで12パターンも試飲したとあって、最後は饒舌、上機嫌だったみなさま(まるで宴会)。本格焼酎は世界に通用する! という自信を与えてくれたのだった。

Shochu Advisors
今回の特集にめちゃめちゃ協力してくださった、九州焼酎探検隊のみなさんもイベントに参加、みんなからの焼酎についての質問などにも答えてくれた。本格焼酎を愛してやまない彼らのサイト、ぜひチェックしてみて!
九州焼酎探検隊http://beefheart.power.ne.jp/tankentai/tankentai.html

Originally published in Fukuoka Now magazine (fn58, Oct. 2003)

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Fukuoka City
Published: Oct 1, 2003 / Last Updated: Jun 13, 2017

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